Case 01

CKD未治療者への受療勧奨

慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)は、尿・血液など、腎臓に関する数値の異常が3か月以上続き、腎機能が低下している状態を指します。慢性腎臓病を放置すると、最終的には血液透析や腹膜透析、腎移植などが必要になります。それらの治療が必要な患者数は全世界で増え続けており、各国で対策を迫られています。
慢性腎臓病は、初期の自覚症状がほとんどなく、本人が気付かないうちに進行するのが特徴です。そのため、定期的な検査で兆候をいち早く見つけ出し、早期に治療を開始することが大切です。しかし、健診結果によって自分が慢性腎臓病に該当することを知った有所見者のうち、健診後6か月以内に医療機関を受診する割合はわずか2%と、その受診率はかなり低い状況にあります。その理由は、慢性腎臓病という病気の認知が低く、その危険性が理解されていないからだと言えるでしょう。

さらに、人工透析への移行リスクが高い慢性腎臓病(CKD)ステージG3が疑われる人のうち、治療を受けている割合はわずか15%程度にとどまると推計されています。厚生労働省は、生活習慣病・人工透析による医療費負担の増大やQOLの低下が喫緊の課題だとして、2016年に「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を策定し、都道府県・市区町村に対し取り組みを推進するよう要請しました。医療費適正化のためにも、慢性腎臓病患者の医療機関受診率の向上は必要不可欠です。

こうした状況のなか、私たちは厚生労働省からの委託を受け、京都大学福間研究室と共同で本事業を実施しました。2016年度に、とある自治体の特定健診結果とレセプトデータから、よりリスクが高い未治療者を抽出し、医療機関への通院を促す通知を送付。一部の対象者に関しては、後日電話や訪問によるフォローアップを行いました。

評価結果としては、働きかけをしなかった場合の未治療者の受診者数は7/105 名(6.7%)に対し、通院を促した場合の受診者数は32/89 名(36.0%)でした。特にリスクが高い対象者の受診者数は26/73 名(35.6%)と、事業の実施により受診率の大幅な上昇が認められました。

参考資料
株式会社キャンサースキャン「AI(人工知能)を活用した効果的な医療受診勧奨による慢性腎臓病の治療率向上事業報告書」

Case02コロナ禍での「受診控え」を解消する生活習慣病の重症化予防事業