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COPD(慢性閉塞性肺疾患)啓発事業

COPD(chronic obstructive pulmonary disease)とは、長期の喫煙習慣が主な要因となる肺の炎症性疾患であり、日本語では「慢性閉塞性肺疾患」と呼ばれています。従来は「慢性気管支炎」や「肺気腫」と呼ばれていた疾患の総称がこのCOPDで、症状としては息切れや咳・痰、運動などをしたときに生じる息切れ(労作時の呼吸困難)などが挙げられます。

さらに病気が進むと、少しの動作でも息切れするようになり、食欲低下による栄養不足や体重減少、筋力の低下や身体の衰えの原因にもなります。こうした負のスパイラルに陥ると、日常生活の質(QOL)が下がるだけでなく、在宅酸素療法や合併症の発症などによる医療費の増大および要介護状態にもつながります。死亡原因として急速に増加すると予測されるCOPDへの対策は、国民の健康寿命の延伸を図るうえで重要な課題といえるでしょう。

COPDの国内の有病者数は約530万人と推計されていますが、治療している患者数は1割にも満たないといわれており、未治療者が多いことが課題の一つです。症状が現れても、加齢によるものとして見過ごされやすいのも原因の一つであり、COPDと気付かずに発見が遅れてしまうことも少なくありません。こうした現状を改善するには、COPDの認知度向上だけではなく、肺機能検査のさらなる普及・実施を進めていくことが重要です。キャンサースキャンではリスクが高まる高齢者や喫煙者に向けた疾患啓発活動を展開しています。

滋賀県長浜市との連携・協力により実施したCOPD啓発事業では、ヘルスデータからCOPDのハイリスク者および治療中断者を抽出し、ハイリスク者には肺機能検査を推奨する疾患啓発通知を、治療中断者には治療継続を推奨する受診勧奨通知を送付しました。

ターゲットを明確にした自治体からの啓発は、送付した通知を「自分事」として受け取りやすくするのに効果を発揮します。滋賀県長浜市との事業では、疾患の啓発通知送付後に行った対象者へのアンケート調査において、全体の約74%が「受け取った」と回答しました。また、回答者の約56%が医療機関の受診状況について「受診した」または「これから受診するつもり」と回答し、対象者の意識変容に対する一定の成果を得ることができました。さらに、比較群(前年同時期の同条件対象者)に比べ、ハイリスク者や治療中断者の医療機関受診率がそれぞれ約1.5倍に増加するなど、実際の行動変容にもつながっていることを確認しています。

グラフに関する情報:
左図:啓発に対する認知度
出所:滋賀県長浜市 COPD啓発事業の効果検証報告書(最終結果)より
(疾患啓発通知の送付後に、対象者へのアンケート調査を実施。アンケート対象者:921人、回答者:486人、回答率:52.8 %)

右図:医療機関への受診意識の変容度
出所:滋賀県長浜市 COPD啓発事業の効果検証報告書(最終結果)より

(疾患啓発通知の発送後に、レセプトデータを用いて実際の医療機関受診状況を把握。ハイリスク者:733人、治療中断者:188人)
医療機関受診の定義は、効果検証期間中に以下の①、②いずれかに該当した場合を「COPD診断のための医療機関受診あり」とした。
①COPD(慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎・肺気腫を含む)の傷病名の記録がある
②肺機能(スパイロメトリー)検査の記録がある